味噌作りをお家で大豆処理からやられている方とお話に上がるのが、味噌の原料割合(レシピ)の疑問
「果たして味噌作りのレシピに正解はあるのか!?」
教室やワークショップなどに行って味噌作りをされている方は、主催者が原料を準備し、配合もその方がされていると思うのであまり考えた事は無いかもです。
私がお答え(まじめverで)するのは、
「配合に正解なんか存在しないです」
「色々な味や色、香りなど個性があるのこそ味噌」
「ただ『知っておくべき基本』はあると思います」
味噌は地域や気候、歴史など様々な要因を反映し、日本には多様な形で残っています。
色・香り・原料・辛さなどそれぞれ全然違いますよね。
ではさきほど言った、「知っておくべき基本」を説明していきます。
麹歩合と塩切歩合
味噌の原料配合を考える際に、まずおさえておくべき言葉が2つあります。
「麹歩合」「塩切歩合」
【大豆=S、米や麦(麹)=R、食塩=Nとした場合】
- 麹歩合→大豆と麹の量の比率(R/S×10)
例1:10割麹=大豆1に対して麹1
例2:20割麹=大豆1に対して麹2
例3:6割麹=大豆1に対して麹0.6 - 塩切歩合→麹と食塩の量の比率(N/R×10)
煮物の調味料比率 醤油:砂糖:みりん=1:1:1みたいな感じ
*豆味噌は、特殊な全量麹なのであてはまらないのでご注意を!
原料配合曲線(麹歩合/塩切歩合)
歴史がある味噌なのでもちろん研究されており、全国で作られるお味噌の配合には麹歩合と塩切歩合で一定の配合曲線がある事がわかっています。
中野正 弘 ・吉 川誠 次 ・海 老 根英 雄: 食 糧 研究所報 告
*あくまで参考でピッタリこの曲線上にくるわけではないのでご注意を
*昔より醸造技術や管理の向上などで少しB領域(低塩傾向)よりに変わってきてる感じです
図の中の右上方向(A領域)になると
→食塩が多く熟成が遅く、塩味が強すぎ調和が無い味になりやすい
図の左下方向(B領域)になると
→発酵では無く、腐敗が進む(異常発酵)などが起こり易い
原料配合曲線と味噌の種類の関係
曲線のだいたいどこに位置してるかで、おおまかな味噌の種類や味の傾向も見えてきます。
麹歩合が高い順(左上から)
- 甘みそ/白みそ(西京味噌)ゾーン
麹歩合:20~25
塩切歩合:1.0~1.5
塩分濃度:5~7%
醸造期間:5日~20日(短期醸造)
→そのまま食べると甘さを感じ、漬け材や加工用に向いた甘いお味噌 - 甘みそ/赤みそ(江戸甘)~甘口みそ/淡色、赤みそゾーン
麹歩合:12~20
塩切歩合:2~4
塩分濃度:6~12%
醸造期間:5日~6ヵ月(短期~中期醸造)
→少し甘さを感じる、昔ながらの甘めの田舎味噌などにも近い。短期~中期醸造用 - 辛口/淡色みそ~辛口/赤みそゾーン
麹歩合:5~12
塩切歩合:4~9.3
塩分濃度:11~13%
醸造期間:2ヵ月~12ヵ月(中期~長期醸造)
→比較的一般的なお味噌。そのまま食べると塩辛さを感じるが味噌汁など汁物で飲むとちょうどいいぐらい配合比率と味噌の種類の簡易表↓
*味噌の辛さを表現する言葉に「甘<甘口<辛」ってありますが、注意点としてそのまま味噌を食べた時の辛さなので、一般的なお味噌は基本的には「辛」ですよ
上のグラフや表は、原料大豆と麹(米or麦)が違う「米味噌」と「麦味噌」にあてはまる考え方で大豆と麹(豆麹)が同じ「豆味噌」はまた別の概念があるので、それは別の機会に!
種水は別!
味噌を混ぜる際に種水(家庭では煮汁を入れる人も)を入れますが、これは原料割合のレシピとは少し別です。
味噌の固さに影響したり、微生物の働きをコントロールするのに重要な『塩分と水分のバランス』である食塩水濃度を調整する目的で補水してます。
ここはまた別の機会に少しお話します。
その他の要素
ただ実際は上記の原料の配合要素以外にも
①原料大豆の処理方法(蒸煮のやり方)
②こうじ菌の選択や麹造り
③熟成期間・環境(熟成容器や醸造方法)
④出来上がった味噌への加工(加熱殺菌や粒味噌・摺り味噌、だし添加など)
色々な要因や要素が、お味噌の味や出来具合に影響しています。
めっちゃあって申し訳ないですが、原料配合の要素は根本的な味噌の方向性を決める重要な要素です。
家庭や教室で事前に準備された材料で味噌作りをされる方は、ここまで知らなくてもいい世界ですが、興味ある方や教える方々にはぜひ正しく知ってもらってると、お味噌の違う一面が見えてくるかもです。
または上記の枠を超えた新しい概念のお味噌作りも興味あり!!
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