昆虫食の魅力を探求するチーム『ANTCICADA(アントシカダ)』さんからご依頼を受けて作った「コオロギ醤油」がANTCICADAより11月1日発売になります!
なんで昆虫?とか昆虫無理!とか色々なご意見があると思います。
近年、昆虫食がたんぱく質の代替・SDGsや環境面などスポットを浴びている面もあります。
ただ私はそういった面では無く、色々な経験と出会いを通して昆虫食は世界では伝統的に食している国があったり、日本でも楽しんでいる方がいる事を知り、1つの食材として向き合って美味しいものを生みだせないかなという想いで今回協力させていただきました。
そこで裏側やプロセスを少しお伝えしつつ、コオロギ醤油を発売した想いをせっかくなので少しお伝えさせていただこうと思います。
昆虫×発酵のきっかけは味噌作り教室
実は『昆虫×発酵』へのトライの始まりは、私が主催する味噌作り教室に参加されたある一般の方からの
「昆虫を使用した味噌って作れます?」
という相談をいただいた事がきっかけです。
当時、昆虫食という分野が環境負荷やたんぱく質の代替など様々な社会課題を解決しうる可能性がある食として注目を浴びている事を少し知っているぐらいでしたが、海外を旅する事も好きでその旅行先で昆虫を食べるという事や未知の食へは抵抗感より好奇心を強く持っているタイプでした。
また味噌屋として発酵の力や意味、味噌の未来の姿や味を考えていた時期でもあったので、めっちゃ面白そう!食べた事無いしやってやってみよう!
ぐらいのノリで相談受された方とバッタやコオロギを使用した味噌を仕込み、どう出来上がるか・味わいがどうなのかなどの試作を始めました。
その後も偶然の出会いからコオロギベンチャーの「ECOLOGGIE」の葦苅さんたちと配合比や麹の違いなど様々な形でコオロギ味噌を仕込み経験とノウハウをつけていく事になりました。
*コオロギ味噌の記事はこちら
ANTCICADAとの出会い
そんなある日、渋谷で開催された昆虫食に関するイベントでコオロギ味噌汁を提供する機会がありました。
そこで偶然?必然?コオロギラーメンを提供しているANTCICADAの皆さんと出会いました。
その日は少し話したぐらいでしたが、その後彼らの食への考え方やアプローチ、また新しい事に挑戦されている話しなどを聞き私も学ぶと同時にいい刺激をもらいました。
そんな中で彼らのテーマの一つである『昆虫食への固定概念を払拭する』という事に関し、味噌屋として、また発酵・醸造に携わるものとして協力できる部分があるなと感じ、じゃあ一緒に美味しいコオロギ醤油作っちゃおうよ!とトントン拍子で話しが進んでいきました。
コオロギを味噌として仕込む際に私が大事にしていた「昆虫も大豆や肉や魚などと同じ素材の一つ」という考えも彼らは正面から向き合いさらに実践し動いており、そんな彼らとの出会いは素敵なタイミングでした。
そこからは試作ややり取りを何度も重ね、ついに今年頭に商品化を目的とした本仕込みをする段階まできました。
ここからは少しコオロギ醤油を仕込むという事にフォーカスした裏話をしていきます。
主役の国産コオロギ
コオロギ醤油の主原料をもちろん国産コオロギです。*1本100mlあたり約482匹
コオロギは種類、餌、飼育法などによって味や風味が違います。
その中でも力強いうまみと香ばしさを持つフタホシコオロギ、繊細で上品なうまみを持つヨーロッパイエコオロギを独自の配合でブレンドしてうま味、香味を引き出してます。
使用しているコオロギは、 徳島大学発ベンチャー企業 「 株式会社 グリラス (徳島県 徳島市 )」と「太陽ホールディングス株式会社(福島県二本松市)」にて管理された生育環境で育てられたコオロギたちです。
私もコオロギの飼育を見にグリラスさんにお伺いしましたが、あの無印良品さんが発売したコオロギせんべいにもこちらのコオロギが使用されていると聞き驚きでした。
コオロギを原料として扱う上で1つとても気を使った部分として、甲殻類と同じようなアレルギーの懸念がある点と他の商品や味噌造りなどにも影響が無いよう、独立した専用工程や道具を使用して製造にあたった部分です。
ここは食品メーカーとしては何よりも気にしないといけない部分だと感じていたからです。
みそ仕込みで使う米麹
麹は愛知県産米で作った自社製の米麹です。
普段米みそを仕込む際に使用している味噌を仕込むために作った米麹になります。
味噌用の米麹は、日本酒用の米麹などとは違い大豆のたんぱく質をしっかり分解する性質がより強くコオロギのたんぱく質や成分から旨みや味をしっかり引き出してくれます。
また同時にこの米麹の甘みや風味なども出来上がりのコオロギ醤油の味の大事な要素の一つになります。
蔵付き、桶付きの微生物
仕込み容器はもちろん私たち桝塚味噌の魂の一つである木桶!
みその仕込みで長年使用してきた使わなくなった小型の木桶を用意しコオロギ醤油専用桶として活用しました。
普段の味噌仕込みもそうですが、私がある意味一番こだわった部分はこの発酵や熟成を進める環境です。
木桶には有用な微生物がたくさん住んでいます。
そんな彼らの力を借りながら桝塚味噌らしいコオロギ醤油に向けて更なる発酵や熟成を進めます。
ここでは昆虫よりもさらに小さい微生物が大活躍する目には見えないロマンが詰まったミクロな世界です。
仕上げに向けて
しっかり熟成が進み、もろみがいい具合になってきたら最後は私たち蔵人の手で仕上げていきます。
今回のコオロギ醤油に準備していた小さな圧搾器。
もろみを布袋に入れ時間をかけながらゆっくり圧搾し、オリ下げや火入れという工程を経てコオロギ醤油は完成します。
もろみを絞る段階で、信じられないと思いますがメロンのよう芳醇な香りが出るんです!
最後まで手を抜かず。ゆっくりちゃんと。
未来の発酵食品
果たしてどんな味なのか?
味の好みもあるので私がとやかく何か言うつもりは無いですが食べたらたぶん驚くと思います。
これがコオロギから出来ているだと!?
発酵食品とは元の素材には無かったものを意図的であれ偶然にしろ、人間のプラスになるように食材の力を引き出してきたという歴史があります。
・保存性を上げる
・味や香りが増す
・栄養を摂取しやすくするなど
フグの卵巣の糠漬けなんて、毒があるものを発酵の力で人間が食べれるようにしてくれたりするものもありますしね。
そんな発酵という日本の伝統技術を用いて、コオロギの姿や味がどんな風に変化したか・・・
コオロギ醤油が未来の発酵食品かはわかりませんが、味噌屋である私なりの発酵食品の未来への挑戦です。
商品概要
●商品名:コオロギ醤油(こいくち/うすくち)
初回分のみ『うすくち』『こいくち』があります
*「うすくち」は絞った際の上澄みのみで爽やかだけど旨みを感じる口当たり
*「こいくち」はオリ(沈殿物)も少し入れてよりコオロギ感を感じる口当たり
●商品内容:100ml
●価格:1640円(いいむし)
●原料:こおろぎ粉末、米麹、食塩
*甲殻類アレルギーの方はご遠慮下さい
●販売先:ANTCICADA