(参照写真:benikoji_2/小林製薬中央研究所)
お問い合わせもいただくので、今回注目をあびている「紅麹」と普段私たちが使用する醸造用の「麹」の違いを解説していきます。
まず「紅麹」は一般的な味噌や醤油、清酒、焼酎などに使われる麹とは生物学的にも異なる菌を使用しており、また、食品として利用される主な目的も醸造用の麹とは異なります。
今回の件で少しわかりずらい点は、紅麹を使用した対象商品に酒や味噌なども含まれていたので目的が混同してしまっている点があります。
麹とは?麹菌の種類とは?
(麦麹)(米麹)(豆麹)
まず「麹」とは、本来の定義としては米や麦や豆などの穀物に麹菌を生やしたもののことです。米に麹菌が生えれば米麹、麦に麹菌が生えれば麦麹、豆に麹菌が生えれば豆麹、となります。
*いつも説明する米麹使うと米みそ、麦麹使うと麦みそ、豆麹使うと豆みそですね
その他には塩麹(塩+米麹)、醤油麹(醤油+米麹)など「麹と何かを合わせたもの」という言葉で使用する場合もありますが、本来的な定義とは実は少し違う部分だったりします。
では私たちが麹をどう味噌造りなど醸造に使用しているかというと、発酵というプロセスに不可欠な「酵素の供給源」になります。
例えば味噌でいうと、容器に味噌を仕込んだ後の発酵過程で麹(麹菌が持つ酵素)を活用して発酵・分解を行っております。
そして麹造りや醸造に使用する麹菌は日本醸造学会によって定義(国菌として)されており、
(1)黄麴菌( Aspergillus oryzae)*味噌、醤油、酒などに使用
(2)黄麴菌(Aspergillus sojae)と黄麴菌の白色変異株*醤油などに使用
(3)黒麴菌(Aspergillus luchuensis)と黒麴菌の白色変異株 *焼酎や泡盛などに使用
の大きく3つになります。
紅麹とは?目的は?
では今回話題になっており「紅麹」とは何かというと、
穀物(主に米)に紅麹菌を生やしたもので、その名のとおり赤い色をしており「着色料や色素」としても用いられてきました。
また紅麹菌は「モナスカス属」と呼ばれるカビの一種で普段私たちが醸造に使用する「アスペルギルス属」とは同じカビの仲間ではありますが、全く違う種類になります。*正確には分類上の「目」から違うので哺乳類でも犬と鹿の違いっていうイメージ
つまり今回の件でお酒や味噌などに紅麹や紅麹由来のベニコウジ色素を使用したものがあり回収や販売中止になっていますが、その紅麹自体は醸造目的(味噌や酒を造る)では無く赤い色味を商品に表現するための着色目的(味噌や酒ができた後に添加する着色料)として使用されており、本来の麹の役割と紅麹(ベニコウジ色素)の役割や目的、使用している麹菌の種類などが一般の方にはわかりずらい部分です。
端的にいうと、醸造屋の麹(米麹、麦麹、豆麹)と紅麹は全然違うよってところです。
どこから毒素が?
今回の件でこの先が気になるのは、紅麹の持つ本来的な毒性(シトリニン)は遺伝子レベルの検査から持っていない(生み出さない)というのは分かっていることだとしたときに、果たしてどこから今回の病気等に繋がる毒性や問題が出たのかは調査の結果が非常に気になる部分です。
人為的、製造面など色々な可能性がありますが、同じ微生物を扱うものとしてこの先をしっかり見ていきたいと思います。
また現時点では紅麹の中で一部のメーカーの原料が取り上げられているだけで、紅麹自体に害があるという結果では無いのでその他含めて風評的な被害だけ起こらないことを願っています。