味噌の仕込みを始めたおばちゃん達が、板の上にごつごつした岩塩を置き棒で叩き始める。
「パンパンパンパン」リズムよく慣れた手つきで叩いていくと次第に石のようだった岩塩が、どんどん細かく日本でも見る細かい岩塩に変化していく。
煮大豆、煮汁、米こうじに砕いた岩塩を混ぜ合わせ、桶にみそを仕込む準備を始める。
挨拶がわりのクラクション、目を開けられない砂ぼこり、日本では味わえない色々な出来事がインドではあった中、今回の旅で一番衝撃を感じたのは実はこの瞬間でした。
はじめまして、私は愛知県で「桝塚味噌」という名で味噌屋を営む野田です。
今回インドに行く機会があり、偶然現地で味噌を作っている方々がいるというお話しを聞き、見てみたいと思い今回はアーシャさんにお伺いさせて頂き、味噌造り含めた食品の製造、農作業、裁縫事業など色々見せていただきました。
今回は初めてのインドへの旅でしたが、素敵な人や食とのに出会い、また日本では起こりえない話など好奇心を刺激される事ばかりでした。
唯一ツラかったのはデリーからアラハバードに移動する夜行電車に乗った際、二段ベッドの上が冷房直撃で寒すぎた事だけです。
海外に味噌を販売しに行く事やテストで味噌を自分で仕込む事はあっても、海外で人がやっているみそ造りを見るのは今回が初めてでした。
みそは日本の中でも実は多様性や地域性が溢れる食べ物です。原料はもちろん、熟成期間や環境、塩分量など地域によって全然違います。
例えば私が生まれた愛知は、少し前まで名古屋めしでおなじみの色の濃い豆みそ(赤みそ)しか食べないと言っても過言ではないエリアでした。
今はだいぶ変わりましたが、20年前スーパーに味噌を買いに行くと棚の9割は赤い味噌しか売っていないぐらいです。
そんな地域性や個性あふれる味噌をインドではどのように作られているか楽しみにお伺いしました。
わくわくしながら見させていただきましたが、本当に驚いたことに、みその仕込みをするインドのおばちゃん達は日本で数が減ってきた昔ながらの味噌屋さんと遜色ない姿と作業だった事です。
「何かあったら教えて下さい!」と滞在中お世話になった平野さんから言われましたが、作業の工程に関してあまり私が伝える事はありませんでした。
おばちゃん達とお話しましたが、味噌の仕込み作業に対してしっかりプライドを持っていらっしゃるなと感じた時、このインドで同業者に出会えたようでなんかうれしかったです。
味噌の基本部分や味や色の違いが“なぜ”起こるのなど味噌造りのロジックだけは少しお伝えしましたが今後こういう味噌に仕上げたい、こう変えたいという事があればぜひ参考にしてもえたらなと思っています。
味噌は、微生物の力を借りた発酵食品で保存性が効く食べ物です。味噌造りには、最低限のルールはあるものの決まった答えはありません。
答えなんかなく人や地域、伝統などによって違い個性があるというのは、私が味噌の一番好きで面白さを感じる部分です。
味噌造りに正解はありません。その土地・風土・取れる原料などで変わるべきだと思いますし変わってきたのが味噌という歴史です。今回インドで出会った味噌が今後どういう変化をとげ、違いが生まれてくるのか楽しみです。
ぜひインドに住む日本の方はもちろん、現地の方にも食べていただけるようになり、その結果アーシャのみなさんや働く方々や次の世代の未来に繋がる事業になるように味噌やその他の加工食品、有機作物をインドで広めていって頂けたらと思っております。
日本から応援しておりますし、また機会をもうけてお邪魔させてもらいたいです!